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「御柱祭」とは
「御柱祭(おんばしらさい)」は正式名称を「式年造宮御柱大祭」といい、桓武天皇の時代より続く、7年目ごと(満6年)の寅と申の年に行われる諏訪大社の神事です。諏訪神社は、上社の「本宮」と「前宮」、下宮の「秋宮」と「春宮」の4宮からなるのですが、御柱祭では、これら4宮の四隅に建てられたご神木「御柱」の建て替えと、各社の宝殿の造営を執り行います。
お祭りでは、諏訪大社の御神木として選ばれた合計16本の巨木を、山から里に「よいさよいさ」の掛け声で引き出します。御神木として選ばれるのは、樹齢150年以上、なおかつ17メートルを超える大きさのもみの木だけです。とても大きいもみの木をなんと人力で運ぶというのがこのお祭りの代々続く伝統!引き出した16本の御柱は4宮の4隅に建立します。山から里に下りた御柱が、二つの社・4つの宮の御神木となることで、神になるといわれていますよ。
巨木を山から切り出す「山出し」では、大きな御柱が次から次へと坂を下る「木落し」と呼ばれる迫力ある光景をみることができます。そして、上社に運ぶ御柱は、川を渡る「川越し」があります。川渡りももちろん人力!この大迫力なシーンも多くの観客を魅了します。また、「山出し」から約1カ月後に行われる、各社に運ぶ「里曳き」では、長持や騎馬行列などの時代絵巻の再現が行われ、パレードのような華やかな神事をみることができます。
「御柱祭」の歴史は古く、その起源や由緒は詳らかになっていませんが、平安時代以前とされています。1356年の室町時代に記された『諏方大明神画詞』では、桓武天皇の時代より前に、諏方神社の社殿の造営が行われていたとあります。そのため、804年の桓武天皇の時代から、信濃国の大祭として盛大に執り行われてきたと考えられています。
祭り名:御柱祭(式年造営御柱大祭)
開催場所:諏訪大社、各地
日程:7年目毎、「山出し」4月、「里曳き」5月
アクセス:
[車]中央自動車道「諏方IC」より上社まで約10分、下社まで約20分
[電車]JR「茅野駅」より上社までタクシーで約10分、JR「下諏訪駅」より下社まで約徒歩15分
公式サイト:https://onbashira.jp/
2022年「御柱祭」の日程
2022年における「御柱祭」の日程は以下の通りです。
「諏訪大社上社御柱抽籖式」:2022年2月15日
「山出し」:
上社 2022年4月2日(土)~4月4日(月)
下社 2022年4月8(金)~4月10日(日)
「里曳き」:
上社 2022年5月3日(火)~5月5日(木)
下社 2022年5月14日(土)~5月16日(月)
「宝殿遷座祭」:
上社 2022年6月15日(水)
下社 2022年5月13日(金)
以前の「御柱祭」は、2016年、2010年、2004年に執り行われています。
「御柱祭」の見どころ
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ここでは「御柱祭」の見どころについて、「山出し」と「里曳き」に分けてご紹介します。
「山出し」の見どころ
先に行われる上社の「山出し」は、4月初旬に茅野市の八ヶ岳の麓から始まります。御柱を切り出した「綱置場」から「御柱屋敷」までの約13㎞ある御柱街道を、御柱にかけてある綱を引いて運びます。上社の御柱の特徴である「めどてこ(V字型に取り付けられた木の柱)」に、てこ衆と呼ばれる音頭をとる氏子(男性)が乗り、御柱を運ぶ操縦の舵をとります。
上社の御柱の山出しの1つ目の見どころは、初日の難所である「穴山の大曲」と呼ばれる、90度に曲がる街中の曲がり角です。両側に民家があり、てこ衆の掛け声で上手く御柱を曳いていきます。大勢の氏子による、技と力の見せ所となっています。
2つ目の見どころは、上社の山出しの二日目と三日目に行われる「木落し」です。木落しでは、急な下り坂を、めどてこに大勢の氏子を乗せたまま、御柱が滑り落ちていきます。その迫力と熱気に、観客も氏子も一体となって盛り上がります。
そして、3つ目の見どころが、こちらも二日目と三日目に行われる「川越し」です。4月初旬の冷たい宮川を、川の中に入りながら御柱を曳いていきます。雪が降る中行われた年もあり、その寒さの中も負けずに川の中を運ぶ雄姿に、観客も圧倒されます。
次の週に行われる下社の「山出し」は、深い森の中にある下諏訪町の「棚木場(たなこば)」から始まります。「棚木場」から「注連掛(しめかけ)」までの約5㎞を、8本の御柱を三日間かけて曳いていきます。下社には上社に見られる、めどてこはありません。下社の「山出し」の見どころのひとつは、難所の「萩倉の大曲」です。大きなカーブがS字になっているので、先頭と最後尾が見にくく、氏子が一体となって曲がっていく様は見事のひとことです。
下社のもうひとつの見どころが、上社と同様にある「木落し」です。こちらも御柱に氏子を乗せて、猛然と坂を下っていくので、観客と氏子が一緒に熱く盛り上がります。
「里曳き」の見どころ
山出しから約1ヵ月後、5月の初旬に上社の「里曳き」が始まります。里曳きとは、山出しで里まで運ばれてきた御神木を、さらに街中を引いて大社の四隅に建てることを言います。上社の里曳きは「御柱屋敷」を出発し、上社の本宮と前宮に運ばれます。上社の里曳きの見どころの1つ目は「御柱迎え」です。御柱屋敷から出発した御柱を、上社の本宮からお舟がお迎えに行きます。お舟は御柱に出会うと、くるりと反転し、御柱を本宮まで先導します。
里曳きの見どころの2つ目は、御柱の周りを彩る花笠踊りや長持(御神輿のようなもの)、龍神の舞!里曳きをよりいっそう盛り上げ、子どもから大人まで楽しめるパレードのような光景を味わえますよ。
上社の里曳きの最後の見どころが「冠落し」です。各宮に着いた御柱は、先端を神斧で三角錐の形に切り落とされ、御神木の姿に変わります。綱を使って、錐になった方を上にして、御柱は荘厳に立ちそびえて神になります。上社の本宮と前宮のそれぞれに、4本の御柱が立つと上社の「里曳き」が終わります。
下社の「里曳き」はその次の週から始まります。下社の里曳きの1つ目の見どころは、上社と同様に、御柱の間に入る花笠踊りや長持、龍神の舞などです。特に、徳川家康の子である松平忠輝の手による『一ノ宮御用』と書かれた立て札は、今なお受け継がれているものです。
2つ目の見どころは、騎馬行列と大名行列です。騎馬行列は出陣騎馬と凱旋騎馬の二種類があり、大名行列は鎌倉時代以前から続く伝統行事です。特に華やかな大名行列は多くの観光客を魅了します。3つ目の見どころは「冠落し」です。こちらも先端を神斧によって三角錐に落とされ、御柱は宮の四隅に建てられて神となり、「里曳き」は終わります。
諏訪大社
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諏訪大社は諏訪湖の周りに4社ある神社で、全国に10,000社以上ある諏方神社の総本社です。日本最古の神社のひとつとされ、山などの自然信仰が大切に守られてきました。諏訪大社・諏方神社は「お諏方さま」や「諏方明神」と呼ばれ、水や風の竜神様として、古くから人々に信仰されています。祭神は建御名方神(タケミナカタノカミ)と八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)の二柱です。水と風を司る神様ですが、五穀豊穣や軍神としての信仰も深く、現在にいたるまで、多くの人の崇敬を集めています。
冒頭でも述べたように、諏訪大社には4つの社があり、諏訪湖の南に、上社である本宮と前宮があります。また、諏訪湖の北には、下社である春宮と秋宮があります。4つの社には宮の四隅に御柱と呼ばれる御神木が建ち、7年目(満6年)ごとに建て替えられる「御柱祭」は、天下の大祭として有名です。そのほかにも「御神渡」や「お舟祭」など、多くの有名なお祭りが催されています。
名称:信濃国一之宮 諏訪大社
住所:
上社本宮/長野県諏方市中州宮山1
上社前宮/長野県茅野市宮川2030
下社春宮/長野県諏訪郡下諏訪町193
下社秋宮/長野県諏訪郡下諏訪町5828
公式サイト:http://www.suwataisha.or.jp/index.html
まとめ
出典:photoAC
今回は長野県の諏方地方に伝わる「御柱祭」についてご紹介しました。千年以上も続く伝統の神事に、一度訪れてみてはいかがでしょう。人々の熱気と一体感に、今も昔も変わらない人の思いを感じることができますよ。
子どもと一緒に、古の祭りの熱さに触れてみたら、その歴史と今に継がれてきた日本の伝統を貴重な思い出にできますよ。ぜひ家族でおでかけしてみてはいかがでしょうか。